一本のワインを手に取るとき、私たちはラベルから産地や収穫年、造り手を読み取ります。その小さな紙片が、土地と時間と人を結ぶ入口になっています。 けれども、そうした情報を容器に記す発想は、近代の瓶詰め文化だけのものではありません。今から三千年以上前、古代エジプトのワイン壺の肩には、黒いインクで文字が書かれていました。そこには王の治世年、ワインを生んだ所領や葡萄園、管理に携わった人物、ときには品質を示す語まで並びます。 しばしば「世界最古のワインラベル」のように紹介される記録です。 しかし、現代のボトルラベルと ...